カブト虫の羽化観察セットの飼育方法 資料C

(産卵と次世代育成)

 

○ カブト虫は、オスとメスを一緒に飼えば、簡単に産卵させることができます。卵から次世代の昆虫を育てるのも、カブト虫飼育の楽しみ方の一つです。

 

        当資料では、産卵と、その後の幼虫飼育について、簡単にご説明します。

 

○ なお、産卵はさほど大きな容器でなくてもできますが、卵がたくさん産まれると、その幼虫全部を次の年まで飼うには、かなり多くの容器が必要になります。また、冬の置き場所が問題になりがちです。その2点を考慮して、ご自宅で産卵させることが可能かどうかご判断下さい。

 

 

カブト虫の一生

 

○ カブト虫は、夏に卵として産まれ、数週間で幼虫になり、幼虫のまま越冬、初夏にサナギを経て成虫になり、成虫が卵を産む、という一生を送ります。

 

○ 卵が幼虫になることを孵化(ふか)、幼虫がサナギになることを蛹化(ようか)、サナギが成虫になることを羽化(うか)、成虫が卵を産むことを産卵(さんらん)といいます。

 

○ 幼虫は、途中で2回脱皮します。最初の脱皮前の幼虫を初齢幼虫、1回目の脱皮後を2齢幼虫、2回目の脱皮後を3齢幼虫といいます。脱皮の度に体全体が大きくなりますが、特に頭が急に大きくなりますので、頭を見ると区別できます。なお、初齢と2齢の期間はそれぞれ2週間くらいで、割と早く3齢になります。3齢の期間が、カブト虫の一生の大半を占めます。

 

○ カブト虫は、幼虫はマットを(自然界では朽ち木を)食べ、成虫は昆虫ゼリーを(自然界では木の樹液を)食べます。サナギと卵は、当然ですが何も食べません。

 

○ 幼虫は、秋と春にたくさんマットを食べて大きくなります。寒い冬の間はほとんどエサを食べずにじっとしています。

 

 

産卵

 

        オスとメスを一緒に飼っていれば、自然に産卵します。ただし、若干の注意事項があります。

 

        メスは、マットの中に産卵します。マットがないと産みません。

 ── マットとは、この観察容器にも入っている、オガクズのようなものです。選び方は、後述します。

 

○ 観察セットの容器は、産卵にはやや小さいです。できれば、もっと大きな容器を用意して下さい。

 ── 産卵させるには、なるべく深い(少なくとも10cm、できれば20cm以上の)容器が有利です。浅い容器でも、産むことは産みますが、産卵数が少なくなったり、せっかく産んだ卵をメスが通る時につぶしてしまうことが多くなったりします(メスは、深い部分には産卵する時にしか行かないか、あるいは普段行く所は決まっていて産卵する所とは場所を分けていますが、浅い部分は頻繁に行き来します)。

 ── 産卵容器には、オスは入れない方が、メスが落ち着けるためベターです(オスは別に虫かごなどで飼育します)。しかし、オスとメスを一緒にしても、産卵はします(産卵数などには影響があります)。なお、虫かご選択にあたっては、成虫はおしっこをしますので、底の面が網ではないものがお勧めです。

 ── メスは、産卵容器に入れると、すぐに潜ってしまいます。マットの中で産卵し、数日経つと、上に這い出して来ます。這い出して来た時は、究極的に空腹ですので、エサ(ゼリー)がないと、早めに死んでしまいます。メスの姿が見えなくても、エサを切らさないようにして下さい。また、転倒防止のための木の枝なども必要です。因みに、這い出してくるのは、たいてい夜ですので、もしも昼にマットの上にいるのを見かけたら、すかさず、虫かごに移して(オスと一緒にして)おきましょう。しばらくオスと一緒にしておけば、また産卵させることができます。

 ── 中を確認しやすいよう、透明な容器を使用することをお勧めします。

 ── 容器の空気穴は、ごくわずかに空気を通すだけで十分ですので、密閉容器でない限りは穴を空ける必要はありません。ただし、密閉容器の場合は、小さな穴を空ける必要があります。なお、蓋がやわらかい容器は、産卵には問題ありませんが、幼虫になるまで使う場合、幼虫が蓋を食い破って逃げ出すことがあります。

 

○ 卵は、放っておいても孵化します。

 ── 卵が産まれているかどうかは、容器の外から見てもわからない(卵は直接見えない)ことが多いです。

 ── 卵はとてもつぶれやすいですし、掘り返しても見つけにくいですので、特に確認する必要がある場合を除き、なるべくマットを掘り返さないことをお勧めします。

 ── 初齢幼虫もつぶれやすいですので、2齢になるまでは、掘り返さないことをお勧めします。2齢になると、容器の外から(主に底から)、時々ですが見えるようになります。

 

 

マットの選択

 

○ マットとは、この観察セットの中にも入っているオガクズのようなもので、産卵床と幼虫のエサになります。ただし、普通のオガクズとは、次の点が異なりますので、必ず昆虫用のものを購入して下さい。昆虫用以外のもの(単なるオガクズや、園芸用のものなど)には、針葉樹や発酵していないオガクズが混ざっていたり、昆虫を食べてしまう害虫がいたりします。

(1)昆虫用マットは、広葉樹のオガクズだけを使用しています。

  ── 幼虫が食べられるのは、広葉樹(クヌギ、コナラ、ブナなど)だけです。針葉樹は、食べられないだけでなく、毒性がありますので、たくさん混ざっていると幼虫が死んでしまいます。

(2)昆虫用マットは、発酵させてあります。

  ── 自然界では、幼虫は、朽ち木を食べています。広葉樹の朽ち木が入手できれば、それ砕いて使用することができます。しかし、朽ち木をたくさん入手するのは難しいため、市販品では、木を朽ちさせる代わりに発酵させています。朽ち木を砕いた製品というのは、見たことがありません。

 

        マットは、百円ショップやホームセンターなどで市販されています。

 ── 値段は、1リットルあたり100円くらいが目安です。大箱で買うと単価が安くなりますが、あまり長期間保存できませんし(涼しいところなら1年以上持ちますが日本の夏の気温では劣化します)、密閉されていないものは保存中にハエが湧くことがありますので、よくご検討下さい。

 

        昆虫専門店などで売っている高級マットは、お勧めしません。

 ── 昆虫専門店で売っている高級なマットは、外国産昆虫用にできているため国産カブト虫には必要ないだけでなく、開封してすぐに使えない(2日ほど空気に晒す必要がある)、水分を加えた時に発酵することがあるなど、不便ですので、お勧めしません。

 

        腐葉土の利用。

 ── 腐葉土は、幼虫が食べることができますので使うことは可能ですが、昆虫用マットと比べ栄養価が低く、蛹室もやや作りにくいです。腐葉土がお手元にある場合などには使っても構いませんが、昆虫用マットよりも多く与える必要があります。特に園芸用の腐葉土は、害虫の危険が大きいです。

 ── なお、腐葉マットという製品は、腐葉土と普通の昆虫マットを混ぜたものですので、特に問題はありません(もっとも、これから購入されるのであれば、わざわざ腐葉マットを選ぶことをお勧めするものではありません)。

 

○ 馬糞などの利用。

 ── 牧場の近くにお住まいの方は、牛や馬のフンを、マットとして使えます。ただし、栄養価が低いですので、昆虫用マットよりも多く与える必要があります。害虫がいたという話はあまり聞きませんが、昆虫マットと比べると、リスクが大きいものと思われます。

 

 

マットの調整

 

        水分を加えて使います。

 ── 市販のマットは、多くの場合、保存と軽量化のためにかなり乾燥していますので、水を加える必要があります。

 ── 水分の量は、このセットに最初に入っているマットの湿り具合を目安にして頂けると良いですが(ただし上の方は乾燥しますので参考になりません)、最初の頃の状態を忘れてしまった場合には、マットを手で握ってみて、パラッとして握れない(固まりにならない)のは水分不足、水分がにじみ出て来るのが感じられるのは水分過多で、その間ならOKです(ずいぶん幅がありますが、かなり適当で大丈夫だということです)。

 ── なお、産卵の時は上記の範囲でやや水分多め、幼虫飼育には同やや水分少なめが適しています。

 

        なお、余ったマットやフンは、園芸に利用できます。

 ── 余ったマットや、幼虫のフンは、園芸用の土に混ぜると、最高の天然肥料になります。遅効性です。また、土をフカフカにする効果もあります。ただし、あまりたくさん混ぜると、土が腐ることや、キノコが発生することがあります。

 

 

秋の飼育

 

○ 秋には、幼虫が、大量のマットを食べます。

 ── 孵化した幼虫は、初齢〜2齢の間は、マットを食べる量は僅かです(1頭あたり数cc程度)。しかし、3齢になると、急に大量のエサを食べ始めます。産卵させた容器がバケツのように大きなものであっても、多くの幼虫が一斉に3齢になると、数日の間に容器内のマットを食べ尽くしてしまいます。できれば、数日に一度は3齢になっていないか確認する(3齢になっていたら掘り出して別の容器に移す)ことがベストですが、それが難しい場合は、2齢のうちに別の容器に分けることをお勧めします。

 ── バケツのように大きな容器でも、春までその容器1つで飼うことは難しいです。産卵の際には深さが、蛹化の際には広さが必要になりますので、別の容器を使った方が有利ではありますが、保管などが問題の場合には両立できる容器を探して下さい。なお、細い容器を使うと、来年は観察セットとして利用できます。

 ── 3齢では、よほど巨大な容器でない限り、時々マットの交換が必要です。交換時期を決めるには、容器の中のマットと分の量で見分けます。目安は、次の通りです。

(1)マットがほとんどなくなり、大部分がフンになってしまった場合には、すぐに交換が必要です。この状態が発生しても、幼虫はすぐに死んでしまうことはありませんが、この状態が続くと大きく育たなくなります。

(2)マットが2割、フンが8割だと、ちょうど替え頃です。

(3)マットが4割、フンが6割くらいの場合、できれば交換した方が良いですが、必須ではありません。ただ、交換の準備をしておいて下さい。

(4)マットが6割、フンが4割くらいの場合、まだ交換する必要はありません。しかし、それが晩秋でしたら、春に幼虫がマットを食べ始めたらじきに交換が必要になります(冬の間は、幼虫はマットをほとんど食べません)。春に、マットを食べ始めた時に気付くのが遅れるとマット不足になりますが、春に頻繁に幼虫の状態を確認することが面倒でしたら、晩秋には交換してしまった方が、春が楽になります。

(5)マットが8割、フンが2割の場合、まだマット交換を考える必要はありません。

 ── なお、マット交換が多少早い分には、問題はありません。上記の(4)くらいまでの状態であれば、交換して構いません。ただし、(5)の状態では、交換しない方が良いです(マット交換は幼虫にストレスを与えます)。

 

○ 目安として、3齢になってから冬までの間に、幼虫1頭あたり2リットルくらいのマットがあれば、途中での交換は不要です。1リットルだと、途中で交換が必要になることが多いです(オスメスの差や個体差がありますので、あくまでも目安です)。

 

○ マット交換の際、目の粗いふるいを利用して、フンと、まだ食べていないマットとを分けることができます。まだ食べていないマットは、再利用できます。ただし、かなりの手間がかかり、コスト対効果はあまり大きくありません。

 

 

冬の飼育

 

○ 幼虫を入れた容器の、冬の置き場所には、注意が必要です。

 ── カブト虫の幼虫は、地面の中に住んでいます。冬の屋外は当然寒いですが、地面の中はあまり極端に冷たくはなりません。この幼虫セットも、地面の中と同じ程度の温度を保つ必要があります。冬の屋外(地面の上)では、寒すぎて死んでしまうことがあります。目安として、氷点下が長時間続くと、危ないです。

 ── かといって、暖房の効いた室内に置いておくと、早く育つため、冬の間に成虫になってしまいます。成虫は、幼虫よりも低温に弱いですので、冬には暖房を止めたら死んでしまいます。目安として、気温10度以上が長時間続くところや、気温15度以上に頻繁になるところは、好ましくありません。

 ── ちょうど良い温度のところは少なく、上記の条件はなかなか実現できません。木造住宅であれば、屋内で比較的寒いところを探して置いておけば、大抵大丈夫です。マンションなどの場合、玄関の床面や靴箱の中などが考えられますが、外断熱などの最新式住宅では適した場所が全くないこともあります。庭に埋めておくことなども一案です。

 

        冬の間は、幼虫はマットをほとんど食べませんので、マット交換をする必要はありません。

 ── 空気(酸素)も少ししか使いませんので、庭に埋める場合、1頭あたり1〜2リットル程度のスペースがあれば、ビニール袋等にくるんでしまって大丈夫です。

 ── 屋内では、乾燥しやすいですので、注意して下さい。

 

 

春から初夏の飼育

 

○ 春に暖かくなると、秋ほどではありませんが、急にマットを大量に食べ始めます。マット切れにご注意下さい。

 ── マットがなくなっても、幼虫がすぐに死んでしまうことはありませんが、大きく育たなくなります。

 

○ 蛹室を作り始めたら、容器内がフンだらけであっても、マット交換をしないで下さい。

 ── 蛹室を作り始める少し前に、体がしわしわになりますが、その頃から、もうマットを食べませんので、交換しなくても問題はありません。

 ── 蛹室作成を始めると、幼虫は体内の水分を放出して周囲のマットを固めます。この時にマットを交換すると、幼虫はもう一度水分を放出するため、水分不足で小さな成虫になってしまいます。

 ── この観察セットは、羽化するまでマット交換をしなくても済むように調整してあります。しかし、ご自身でセットする場合は、蛹室作成開始前までのマット切れと、蛹室作成開始後のマット交換に、注意が必要です。目安として、この観察セットと同じくらいの大きさの容器に2〜3頭入っている場合、4月下旬〜5月上旬頃にマット交換をすれば、マット量は十分です。

 

○ 春から初夏の蛹化までの間に、目安として、幼虫1頭あたり1リットルくらいのマット量が、途中での交換が必要か不要かの境目になります(オスメスの差や個体差がありますので、あくまでも目安です)。

 

以 上